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採集のススメ

 



 川魚の飼育についてまず皆さんに提案したいことがあります。
採集した魚を飼うということはすごく面白いので、是非休日には網をもって、あるいは釣り道具をもって魚とりに出かけてほしいのです。そして飼いきれるお気に入りの個体のみを持ち帰り飼育を楽しんでほしいのです。

というのも、採集をすることにより本来生息している場所を知ることは、それ自体が飼育する際に自然から無言のアドバイスを受けていることになりますし、生息地域をとりまく自然環境をより具体的に分析出来るようになると考えるからです。「エコ」だとか「地球に優しい」など聞こえの良い抽象的な言葉ではなく、本当に今考えなくなくてはならないことや声を大にして言わなければならないことが見えてくると思います。ニュースや新聞などを見ていると、今や少しでも自然界で異変が起こると、なんでもかんでも地球温暖化にむすびつけてため息をついている感じですが、もっとすぐにでも問題提起をし、改善しなければならないことがあるのです。

 例えば、日本の河川にはすごい色とすごい臭いのドブが流れ込んでいる場所がものすごい数であるのです。
ほとんどの日本のため池はバス、ギル以外の生命体があまり存在しないのです。
いまだに用水路や河川の三面護岸はごく普通の工事なのです。
魚の往来をさえぎる堰やダムなどの建設物は今なお数を増やしているのです。

 まだまだありますが、これらのことには意識が向けられていない状態では、地球規模の環境問題についてなど、全く現実性を欠く、空想の世界の問題になりはしないでしょうか?

 実の環境問題を考えるにあたり、採集と飼育は非常に有効な手段です。先日も友人と霞ヶ浦にタナゴを釣りに行ってきましたが、アメリカナマズの死体が異臭を放ち、レンコン畑の濁流が湖に入り、重機が湖の中で何かをやっておりました。これだけでも改善が必要な項目が満載です。考えさせられることが盛りだくさんです。
この日は10年前と同じ、かつて3桁で釣れたポイントで、3匹のアカヒレタビラと数匹のヌマチチブが釣れただけでした。

 採集したものを飼うということは、とても勉強になるということのみならず、現場を知るということで環境問題についての生きた意見を持つことが出来ると思います。

 例えば外来魚問題については、すべての放流行為(放流の定義もきっちりきめるべきですが)についてなんらかの結論を出さないかぎり、いつまでもこの問題は解決するものではないでしょう。
このような議論も「お魚キラー」(どこの釣具店でも売っておりますが、正確に言えばほとんどの水域で禁止といううわさも・・・)をオオクチバス、ブルーギルが入っている池、入っていない池を複数選んで入れてみれば、どんな影響を及ぼしているかは誰の目にも明らかですし、その他の水生生物の少なさもよくわかります。

要はフィールドに出ることにより、非常に複雑な生態系に対して常識的な感覚を多くの人が底上げすれば、自ずから解決する問題も多い。ということを言いたいのです。 

 ここまでは、採集したものを飼うということはとても有意義なことであるということを主張してきましたが、次に採集していないものを飼うこと、つまり購入して飼うことについて考えたいと思います。よく野生種について採集したもの以外は飼うべきではないという意見を耳にします。もし採集したもの以外しか飼う事ができないならば、仕事や学校などで採集する時間や余裕がない人から好きな魚や興味のある魚を飼う機会を無条件に奪ってしまう結果になり、生き物を飼う事はかなり限られた特定の条件を満たした人のみの自由度の少ない趣味になってしまいます。

 私は、小さい頃近所がドブ川で、フナ、ドジョウぐらいしか獲れなかったのですが、近くの釣具店にスジシマドジョウやムギツクなど図鑑でしか見たことのない種類がたまに入荷していたので、小遣いを貯めてよく買いに行きました。もしあの時、自分の手に届く生き物しか水槽で見ることが出来なければ、当然飼育や採集の興味が失われ、自然環境にも大して興味が出なかったかもしれません。アクアリウムは今や一般化された趣味であり、その中に自分の興味のある種を入れて観察することは決して後ろめたいことであってはならないと思います。

 自然の一部を自分の身近に置いておきたいというのは人類共通の正常な欲求です。
古くから庭池や庭園の草木などのように、人間は無自覚に自然を取り込むことにより、自然との距離を保ってきたのです。文明が進み、自然とすっかりかけ離れてしまった現在、部屋の中に水中の自然を取り込んだ結果、アクアリウムという見事な趣味を確立させたのではないでしょうか。水槽飼育が教えてくれる生き物の情報はとても多く、大変有益なものが多いです。

 生き物の飼育という非常に人間らしい趣味に、採集の醍醐味を加えると貴重な文化になり得ます。またそのようになるべく私たちスタッフ一同は行動していきたいと考えております。



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